①福祉業の問題について
「療育をうたっていて上から目線で人の家の家計のことまでずうずうしく話しだす事業所」とか「せっかくトイトレで頑張ったお母さんに、(療育手帳を貰っていくために)うちはオムツ推奨派ですからとか言っちゃう事業所」とか…高齢者施設でも色んな問題を感じることもあり、「ここの施設・事業所って福祉がなんだか分かってないな」と思うことは多々ありましたが、今回の件は、本当に「金儲けのためにグレーな所をついてるな」と心底、嫌な気持ちになりました。そんな話を書きたいと思います。
②とある保育園の問題について
この問題を理解する前に「通所受給者証」の理解
この問題を理解していただくために、「通所受給者証というものを知って頂けたら」と思います。
通所受給者証の申請に必要なものは、地域によって異なる場合があります。
通所受給者証とは、障害児通所支援(児童発達支援や放課後等デイサービスなど)の利用するために住んでいる市区町村から交付される証明書のことです。
通所受給者証を取得後、行政から給付を受けて「一部の自己負担額」で障害児通所支援のサービスを利用することができます。
支給申請書 (市区町村に問い合わせ)
マイナンバーを確認できる書類
負担上限金額の申請に必要な書類(生活保護受給証明書や市民税非課税世帯証明書など)
自己負担額が1割になるのか3割になるのかなどを判断するために必要です。
課税や収入状況に関する書類
障害児支援利用計画案…相談支援事業所へ依頼するか、保護者や支援者が作成するセルフプランも可能。
印鑑
発達に支援が必要だとわかるもの…療育手帳、障害者手帳、診断書、もしくは医師や臨床心理士等の意見書など
この問題は、上の赤字、医師の診断書の必要性のグレーな所、つまり「通所受給者証が自治体の判断だけで出せる」という所に目をつけての「金儲け主義」の社会的問題だと思います。
とある保育園の話
自分の方である保育園の話を聞きました。簡単に表現するなら、「通所受給者証を貰うように誘導する保育園」という話です。
最近は、『発達グレー』という言葉を結構に聞きますよね。「うちの子は発達障害なのでは?」と悩む親御さんも多いと思います。その点と「発達グレーでもとれる通所受給者証」というあいまいな点を利用して、自分が経営している児童発達支援に子供を通わせるという保育園の話です。
具体的に…
とある保育園では、通っている児童に、「うちの方では特別なプログラムを組んだ児童発達をしています。もしも、興味があったら見て下さいね」と話します。お話をする相手は、発達グレーな子や健常児でも、少しだけ慌ただしい子とか、偏食がある子です。「お宅のお子様は偏食があったり、少し落ち着きがないようですね。だったら、うちでも児童発達支援をしているので」と健常者の子であってもそう話すそうです。
そして、話は続きます。親は不安になったりしながら、話に耳を傾けます。児童発達支援で行われている内容は、健常の子にとっても魅力的にも映るものです。「児童発達支援は、通所受給者証が必要なんです。でもですね、そんな難しいものではないですよ。それは、簡単に取れるんですよ。市区町村に相談すれば良いんです。で、話す時には要は保護者さんの言い方次第です」と誘導するんです。
そうして、保育園の利用料を貰っていて、さらに短時間でも利用料を多くもらえる児童発達支援でプラスαを得ているわけです。児童発達支援の方の利用児童の確保とも言えると思います。
僕としては、「それは簡単に貰える。要は言い方次第」という言い方がもっとも頭にきたのです。こういうことをされると、「本当に必要な人の予算が、本来必要でない所で使われている」という気持ちにもなります。ここでの問題は、
①本来、健常児の幼児でも起こりえること(例えば、偏食・ちょっとコミュニケーションに難あり・少し多動など)を安易に障害と言ってしまうこと ②保護者の心配を煽って、児童発達支援に誘導すること ③「療育」(障害特性のある子に利用)と「習い事」(一般の企業がしている知育など)の違いがあまりないことを利用して、「習い事だと高いけれど、療育なら安く同じような内容のプログラムが受けられる」という認識で、児童を誘導していること
これらは、僕としては、凄く問題だと思っているのです。保育園も経営もあると思います。そして、この話は、他人から聞いた話ですから事実確認が出来ている話ではありません。ただし、こういった保育園もあるだろうと思いますし、それはきっと事実なのだろうと思っています。
※誤解がないように…こういった保育園ばかりではないことを一応、念をおしておきたいと思います。保育園が児童発達支援もやっているケースもあるとは思いますが、「受け入れ先をきちんとしてあげたい…」「おかあさんの心配を軽減してあげたい」という気持ちで事業を運営している倫理観のある保育園もあると思っています。すべてのそうったいった事業所が悪い事業所だとは思わないでください。
通所受給者証をすぐに出しすぎ
ここでの問題は、凄く難しいのですが、「療育手帳がすぐに出せないこと」が問題の根幹にあります。それは、「医師との診断」の上で診察には予約が必要であり、その予約が「半年後」になってしまうケースがあるように、保護者様がお子様に療育を受けさせるのに時間が掛かるという「問題」が影響していると思います。
通所受給者証を発行するに差し当たって、発行スピードを意識するが故に、「医師の診断書が必ずしも必要でないこと」がこういった「グレーゾーン」を作ってしまっているのではないかと思います。
健常児を障害児扱いにして自治体のお金で経営
今回の保育園では、そういった点を利用して、「あなたのお子様は障害かも」と煽って、「もしも、安心したいなら、うちにはこんなプログラムもあります」と児童発達支援でプラスアルファのお金を得ているわけです。社会の仕組みの、本当にグレーな所をついて余計にお金を得ている。それは、その保育園だけでなく、「あいまいな行政」の問題であると僕は思います。
そうでないなら「本当に必要な人へ」お金が回るはず
そこで犠牲になるのは誰か。
実は、その利用児童にはないと思います。健常児の利用児童や保護者様にとっては、本来「習い事だと月謝が2・3万かかりそうな知育を、月々(自治体によって異なるとは思いますが)5000円程度で受けられる」ので、逆に喜ばしいのかもれません。
でも、広く視点を変えれば、『そういった保育園が沢山あればあるほど、本来、療育をもっと良い形で受けるべきはずの「障害児」が一番割を食っているのだ』と僕は思います。
本来、必要な形で、必要な人のもとにお金が投資されるようになってほしいのです。
今年の法改正で、「児童発達支援」は「療育的プログラム」を整えていく方向にあるのですが、それだけではこういったことが無くなるわけではないでしょう。『誰のための療育か』をその法改正に合わせて、もっと考えるべきではないかと僕は思います。きちんとした判断がされた中で「療育を受けるべき子供」が決まる仕組みであれば、そんな話はなくなるのですから。
つまり、行政がきちんと間に入って、『保育園の促し程度で自分の所に誘導なんて出来ない仕組みが必要だ』と僕は思うのです。
まとめ
最後に…僕は「福祉が大好き」な人間です。
現場にいつまでもいたいと思いますし、利用者と関わっていきたい。それなのに、こういった法律のグレーを突くような話を結構に耳にしますし、がっかりさせられる福祉業を行う人は一定数います。
経営者にとっては、お金を稼ぐことで、経営が成り立ちます。だから、ある一定の理解はできます。そして、利用する親御さまの「子どもによりよい教育を」という気持ちも理解はできます。でも、「グレーな所をついて、心配を煽って、自分の経営する児童発達支援に誘導」みたいな話は、凄く悲しく感じます。そして、そこから「怒り」も出てきます。
僕が福祉が好きなのは、人の根幹にある「優しい気持ち」が溢れだす仕事だから好きなのです。その好きな気持ちを冷めさせるような経営のやり方は、ほんとうに無くなって欲しいと心から願います。そして、そういう事業所や施設は淘汰されてほしいと思います。法改正もありますが、そういった点に着眼点を持ち、見直しもしてほしいと願います。
また、↓のリンクで、詳細にこの問題について話をしています。興味があったら聞いてみてくれたら嬉しいです。