はじめに:卒業の先にある「長い人生」に向けて

こんにちは、あひるのおです。
全5回でお届けしてきた「発達障害児支援ロードマップ」も、いよいよ最終章を迎えました。 前回の「④13~18歳 青年期支援と進路決定」では、学校卒業という大きな節目に向けた準備についてお伝えしました。今回はその先。18歳から始まる「社会人としての生活」について、徹底解説します。また、その中で「親亡き後」を見据え、社会の制度を考えながら、「親が考えておくべきこと」についてもまとめました。
「学校がなくなった後、毎日どう過ごすの?」
「親がいなくなった後の生活(親亡き後)が不安……」
「新しく始まった『就労選択支援』って何?」
そんなパパ・ママの不安を解消し、お子さんが自分らしく生きるためのヒントをまとめました。私と妻は障害者支援施設の現場で介護職として働き、社会福祉士として色々な施設さんと関わりをもった経験があります。今も、障害者施設で働いています.日ごろから制度の解説だけでなく、現場で見てきた「豊かな生活のリアル」もたっぷり詰め込みました。また、社会福祉士として、相談支援専門員としてのしても大切にしていきたいと思います。
これまでのロードマップは以下から見ることができます↓
〇①発達障害児支援ロードマップ
〇②0歳から小学校入学まで!(経験者パパが語る)就学前ロードマップ
〇③6~12歳(経験者パパが語る )学童期支援ロードマップ
〇④13~18歳 青年期支援と進路決定
1. 【2025年最新】進路決定の強い味方「就労選択支援」
卒業後の進路を選ぶ際、今最も注目すべきなのが、2024年4月に新設された「就労選択支援」という制度です。
これまでは「先生の勧め」や「見学の印象」で決めることが多かった進路ですが、これからはより客観的に「自分に合った働き方」を探せるようになります。
「就労選択支援」のポイント
- 本人の強みを見極める: 実際の作業体験を通じて、得意・不得意をプロが評価(アセスメント)します。
- 2025年10月から原則必須に: 就労移行支援やA型・B型を利用する前に、このステップを挟むことがルール化されます。
- ミスマッチを防ぐ: 「無理して働いて二次障害になる」のを防ぎ、最適な環境を見つけるための1ヶ月間の準備期間です。
現場を知る私の視点 施設で働いていた頃、「合わない環境で頑張りすぎて、心が折れてしまった」という方を何人も見てきました。この制度を使えば、本人の特性と事業所の相性をデータで確認できるため、無理のないスタートが切れるようになります。また、知り合いの相談支援員さんからの話では、就労後に就労先があわずに辞めてしまった場合、次を見つけるのが難しいという話があります。そういったミスマッチからの本人の「自信喪失(自己肯定感の低下)」に繋がらないように、改めて就労を考えるステップはとても重要だと思います。特別支援学校の生徒でも利用可能です。
※就労選択支援については、今後、より具体的な体験談・社会福祉士のネットワークを通じて、「本当の声」を掲載していきたいと思います。

厚生労働省の図になりますが、就労選択支援を利用する時の一か月間のスケジュールになります。

出典:厚生労働省「就労選択支援について」
001389440.pdf
2. 卒業後の「日中の居場所」はどこにする?就労継続支援A型 就労継続支援B型 生活介護
18歳以降は、学校に代わって「福祉サービス」を組み合わせて生活を組み立てます。
| サービス名 | 主な内容 | こんな人におすすめ |
| 就労移行支援 | 一般企業への就職に向けた訓練 | 企業で働きたい、スキルアップしたい |
| 就労継続支援A型 | 雇用契約を結び、最低賃金をもらって働く | 自立を目指し、一定の作業能力がある |
| 就労継続支援B型 | 自分のペースで作業し、工賃をもらう | 働く喜びを感じつつ、体調を優先したい |
| 生活介護 | 入浴・食事の介助、創作活動、レク | 手厚いサポートを受けつつ、楽しく過ごしたい |
親としての声
ここで親として、自分の考えをお伝えしていきたいと思います。就労支援A型とB型の違いがあると思いますが、うちの息子としては、就労継続支援B型か生活介護になるのではないか?と思っています。本来の実力を発揮すれば、「一般就労も…」と思ってきましたが、現実的には厳しいように思います。そんな中で、現在の就労継続支援B型の収入平均は、16000円くらになると思います。「その16000円をどうとらえるか?も親の視点として大切にする必要もあるのではないか?」と僕は思います。最近、うちでは、「生活介護でも一生懸命通って、そこでやるべきことが出来て、楽しく生活することが出来ているなら、16000円を得ることに重きを置かなくても良いのではないか?」という考えにもなっているのです。もちろん、「生活介護」に身を置くためには、区分3以上という目安があります。これは、「障害の重さだけでなく、どの程度、介助が必要か?」という目安が必要です。ただ、そこをクリアした際に、「生活介護だと稼げないからダメだ」「学校の先生がいうから、うちは就労B」と安易に決めるのではなくて、「子供がいかに幸せを感じて、笑顔で過ごせるか」に着眼点を置いて環境としてサービスを選択したい…それも大切な視点ではないか?と思うのです。
3. 「住まい」の選択肢:親なきあとを見据えた自立

「ずっと自宅で一緒に暮らすのか、それとも外の世界へ踏み出すのか」 パパ・ママにとって、最も頭を悩ませる問題かもしれません。
- グループホーム(共同生活援助): 地域の中で、数人の仲間とサポートスタッフ(世話人)と共に暮らします。自立への第一歩として選ぶ方が多いです。
- 入所施設(施設入所支援): 24時間の介助体制があります。重度の特性がある場合でも、専門スタッフが見守る安心感があります。
- 一人暮らし+訪問系サービス: ヘルパーさんを使いながら、自分の城を持って暮らす選択肢もあります。
- 実家で暮らす:両親の助けを得ながら、時にヘルパーや他のサービスを利用しながら、実家で暮らします。
ここが深掘りポイント(施設経験から)
施設での介護中、印象的だったのは「家族と離れて暮らすことで、かえって親子関係が良くなった」というケースです。適切な距離感と専門的なケアが、本人の自立心を育てることもあります。
また、反対にデメリットもあります。
施設も様々。当然に、凄く自立を促しくれて、自由を感じれる環境で、支援員も優しい。それが理想だと思います。ただ、僕が施設を見てきて感じるのは、そういった理想的環境ばかりではないということです。物理的な環境もそうですが、大切なのは、「支援員」との関わりです。ただ、その支援員の質にもばらつきがあります。支援員さんには、同じような支援、同じような支援力を求めたいものですが、実際の現場では、職員の性格・支援への考え方など色々な支援員がいるのが実際です。そのばらつきや、施設の理念によって、良い環境、悪い環境があるように感じます。大切なのは、よく施設(グーループホームも含めて)を知り、如何に自分の子にあった環境を探すか?だと思います。
4. 20歳の壁を越える:大切なお金と権利の話

19歳から20歳は、制度上の「成人」への切り替わり時期です。以下の準備は早めに進めましょう。
- 障害基礎年金の受給: 20歳から申請可能です。将来の経済的自立を支える大きな柱です。
- 成年後見制度: 本人が不利益な契約を結ばないよう、法律的に守ってくれる人を立てる制度です。
- 特定贈与信託など: 親がいなくなった後のお金をどう残すか、専門家に相談しておく時期でもあります。
5. 【現場のリアル】豊かな人生を送っている人の共通点
障害者支援施設の現場で、たくさんの方の人生に触れてきました。卒業後に「生き生きと過ごしている人」には、3つの共通点がありました。
- 「家族以外の居場所」を持っている: スタッフ(支援者)やボランティア、作業所の仲間など、サードプレイスがある人は心が安定しています。
- 「NO」と言える関係性: 嫌なことを「嫌だ」と言える、意思表示を尊重される環境にいる人は、二次障害が少ないです。
- 小さな「好き」を追求している: 特定の電車、音楽、掃除、散歩……。自分の「好き」を日課に持っている人は、生活の質(QOL)が非常に高いです。
社会福祉士として思う…の子供にとって良い選択とは?
支援者との関わりの中で、大切にしたいのは、「合理的配慮の考え方」ではないかなと思います。この「合理的配慮」というものをどう捉えているかで、「支援の質」が変わるような気がします。関わる人によって人生が左右されるのは、僕らも一緒。子供にとっての、その人的な環境を、どう整えて、どう選択していくか。それが、親が成し遂げるべき最大なテーマのように思います。
発達障害児パパママさんへ 一番伝えたいこと「子供たちの自立」について

親として…社会福祉士として…
発達障害児のパパママさんに伝えたいことを書きます。
あくまでも、僕の考え方であり、押し付けるつもりはありません。
僕は、最近になって、息子の「自立」について凄く考えるようになりました。それまでは、妻が息子をどれほどに愛しているかを知っているので、僕は「ずっと一緒に過ごさせたい」「ギリギリまで妻と一緒に息子を」そう考えていました。
でも、最近は、少し違います。
「自立できることが、息子にとっての本当の意味の幸せなのではないか?」と考えるようになったのです。人生は長い。僕は、僕がこの世界からいなくなった時の息子の姿を考えます。
「ねえ、君は笑っているかい?それとも泣いているかい?」
「ねえ、君は支援者さんと楽しく過ごしているかい?それとも、相手にされてなくったり、嫌われて寂しい?」
そんなことばかり考えるようになりました。障害児にとって、障害児のパパママにとって、「親亡き後」は最大のテーマです。「息子が僕がいなくなってから、どんな顔をしているかを考えた時には、もちろん笑って過ごしていて欲しい」と考えます。その時のために、僕は息子に何を伝えて、何を教えれば良いのか。僕ら、障害児の親は苦労が着きません。思い出せば、苦しいことがばかりが脳裏に浮かびます。もちろん、楽しいことも、癒されることもありますが、でも、今も苦しかったり、悲しかったりの毎日があります。
ただ、将来は、支援者さんの手をかりて生きる息子には笑っていてほしい。
だから、最近は、将来の息子の笑顔を作るために、僕は自立を阻害するような考え方では、それは「無責任だ」と考えるようになったのです。息子が、親元を離れて、幸せそうに笑っている。これこそが、僕の親としての最大の喜びのように感じます。
だからこそ、「支援の環境」を意識して、そのための「選択」する。そして、そこで息子が笑顔で過ごせるように、少しでも多くの「自立」を作る。それが何よりも大切なのではないかと思います。
今日、精神科病棟で働く、看護師の方の話を聞きに出かけました。
その中で、その支援の難しさを学びました。
知的障害・自閉症・ADHD・LD、場面緘黙症、色々な障害があります。
その中で、心を壊さずに人生を終えてほしい。二次障害に苦しまずに、過ごしてほしい。
だからこそ、その時のために、僕は、「息子の自立に対して、使命感を持つべきじゃないか?」と思うようになりました。もちろん、厳しくするのではなくて。
そして、その支えになるのが、息子にとってのパパとママへの「愛着」です。
それは、息子の心にずっと根付いて、どこかで「愛されていたという自信」が自立の支えになるのだと思います。
離れていても、傍にいなくても、心のどっかにパパとママの存在が心にあり支えになる。
だから、少し遠くにはばたける。
そのくらい十分な愛情を伝えたい。本当の意味での息子の幸せを掴むための「自立」のために、
僕は、今、息子を心から愛し、大切に思い、そして、一つずつ、小さなステップで生活力を身に着ける。
それは、その子なりの、息子なりのステップで良いと思います。
そのために、親として、自立のために、将来に息子に何が必要かを考え抜いて、息子を支えたいと思うのです。
おわりに:ロードマップのその先へ
全5回にわたってお届けしてきた「発達障害児支援ロードマップ」。
0歳の診断から18歳以降の生活まで、その道のりは決して平坦ではありません。
でも、あなたは一人ではありません。
かつての私、今の私のように、施設スタッフ、相談員さん、そして同じ悩みを持つ仲間たちが必ずいます。
一番大切なのは、お子さんも、そしてパパ・ママも、「今日一日、笑って過ごせた」と思えること。
このロードマップが、皆さんの未来を少しでも明るく照らすものになれば幸いです。
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