
今回は、僕が勤めている会社のある男の子のエピソードです。離婚後の男の子の心境。うちの嫁も離婚をして、僕と再婚をしているので、息子のように思える時があるのです…
とある不登校児のエピソード

※利用者様のお話ですので、多少、年齢層、男女等、個人特定できる部分を変更していることがあります。
中学生になったある男の子のお話です。
うちの放デイからはずいぶんと離れた所に住んでいる中学生。小学6年の終盤になり、学校とのトラブルからうちの放デイに来るようになりました。もともと支援級の彼ですが、ゲーム三昧で生きていて、学校にいけば先生に楯突いたりして、卒業式にも出れませんでした。
ADHD気質。性格は短気。
両親は離婚。暴力もあった様子。
そんな彼は、同じ学年の荒れている男子に感化されては、
暴力的になったり、自暴自棄的になったりしていました。
うちの放デイに来ることになった際には、職員にも緊張感がありました。
なんせ、小学生とは言え、「学校1の悪」と言われ、「怒ると何をするか分からないから」と言われていました。
僕らの付き合いは、短いので、まだ「信頼関係」が出来上がっていません。
だから、注意するとか、諭すとか、そういうものも受け付けてくれません。
でも、放デイに来ても悪態は凄くて、修正がきかない。
でも、僕は見えていたつもりです。
そんな彼は、寂しいだけ。つらいだけ。もともとは、心の優しい良い子。
そう、僕は信じていました。
だって、犬を可愛がっていたから(笑)
「動物を可愛がる子供に悪い奴っていんのかよ(笑)」
そう思っていました。
ある日のことでした。
放デイにも慣れてきましたが、数日後、慣れてきた頃こそ、問題が起こるもの(笑)
友達とのトラブルから大喧嘩。
泣いて騒いで、帰らない騒動を起こし、机をひっくり返し、泣きながらでしたが、暴言をこれでもかってくらい吐いていました。
僕は、その居室に行き、彼が暴れないように押さえつけます。
「うるせー、てめえ、はなせ、ころしてやる…」
そんな暴言を大声で叫び続けます。
「大丈夫、心配するな」
「君は良い子だよ。君が日々、躍起になるには、いろんなことが辛いからだろ。大丈夫、ここは、君の帰る場所になる。おれは、君を信じる。大丈夫。俺は信じる。君は良い子だ」
そう何度も伝えました。30分くらい、そんな時間でした。蹴られたり、ぶたれたりしながら(笑)
正直に言えば、思いのたけをすべてぶつけました。
ただ、核心を言い続ける。
「君は良い子」と。
誰も、彼を理解するようで、してくれない。
暴力的であり、学校でも物損を含めて、たくさんの悪さもしてきました。
がしかし、色んなことを考えたら、
「俺でもそうなるかもな」と思えることが沢山あるわけです。
誰が彼を理解しただろうか?
ただ、物を壊す。とんでもないことをする。喧嘩もする。問題ばかりに目がいってしまう。
でも、本質はそこにはない。
上手くいかないみじめさ。強くなりたいという夢。本当は心細いのに甘える先がない苦しさ。
そういったものを学校の先生は理解していたのだろうか?
学校の先生とお話したこともありましたが、到底、理解しているようには感じなかったのです。
僕も理解はしていなかった。
それは、あまりに短い関係性しかなかったからです。
もっと、根深い、「辛い思い」が彼にはあり、そういったものを小学生という年齢で背負ってきた。
お母さんに会った時に、「うちの放デイに来させて下さい」とお願いした。
ある日の送迎の時でした。
「大丈夫です。きっと、居場所になるから」と伝えていました。
でも…
その後、彼はずっと来ませんでした。しばらく、音沙汰がなくなり、「来ないかな」と心配でした。
それから、1ヶ月半がたち、彼は中学生になりました。
小学校の卒業式にも出ませんでしたが、入学式にも出ていなかったようです。
小学校の最後は不登校に近い恰好になりましたが、それでも友達がいました。
同じように、学校に迷惑をかける友達がいました。数名です。
でも、その友達は、中学校に全員が通えています。
彼だけが不登校。
「あんなところには行きたくない」と言いますが、
実際には、不安なんだと思います。
怖いという表現が正しいかもしれません。
中学校に通っているみんなは、部活動などを開始しています。
出遅れてしまった彼は、そこに混じるには、相当の勇気が必要です。
彼の居場所は、
家庭しかありません。
それは、本当に辛いことだと思うのです。
6年間通った小学校を卒業して、肌身で、その居場所の大切さを、今、感じているのではないかなと思います。
中学校には新しい先生たちがいます。
中学校では、一番の年下の学年になり、身体の大きな「先輩」がいます。
小学校の一番トップだった乱暴者では、太刀打ちできません。
粋がって、不安ながらも通えなかった中学校でしたが、すでに、行きたくても行けないといった場所になったのではないかな?と思います。
出だしが狂ったことで、彼は、どうにも出来ない不安に包まれているのではないか?と思います。
そんな彼が、今日、うちの放デイに来てくれました。
僕は、事務仕事があまりに忙しく、挨拶は「お、来たね」程度で済ませていました。
でも、彼がどんな気持ちでうちの放デイに来たのかが気になっていました。
昼前から来ている彼は、
1人で、毛布にくるまって、寝っ転がって携帯を弄っていました。
「よっ、よく来たな。待ってたぞ」というと
「うるせい、じじい」と言われました(笑)
「口の利き方がわりいな。ま、来たから、それでいい。飯は食わんの。ちゃんと食べろよぉ」と伝え、
学校のことなど、どうでもいいという感じで、普段と変わらない感じで話しをしました。彼は無視をしていました。
しばらくは悪態(笑)
でも、それで良いんだと思います。
時間は大切です。僕らは焦りすぎます。
信頼関係を作るのには、時間が掛かります。
でも、僕は、うちの放デイが、いつかは彼の第二の家になってほしいと思うのです。
学校はどうでもいい。
それは、僕が考えることではありません。
うちの放デイを彼の居場所として、
どう構築してあげるのかが、僕の仕事です。
「○○、何やってんだよ。こっちきて、一緒にゲームやろうぜ」
「○○、はやくおやつ食えよ。腹、減ってんだろ。アイスもあるから」
そんな感じで話しかけていきます。
「うるせえな。今、行くよ」
そういって、アイスとせんべいを持っていきます。
袋ごと、持っていこうとしやがるので、
「みんなの分もあるんだから、全部は持っていくなよ」
そういって、回収します。
紙皿にちょっと大目のおせんべい。
「まだ、食べるなら、ポテチもあるよ。あまいチョコレートもあるけど、どうする?」
「もう、いいよ」少し苦笑いの彼。
少しずつ、アイスのように、刺々しさが溶けていきます。
そして、帰りの送迎は自分。
「○○、また、来いよ。君が今日来た。それが、俺にしちゃ、どれほどに嬉しかったか分かる?ねえ、分かる?分からないんだろうな。俺にしてみりゃ、神様に土下座しても良いくらい、嬉しかったんだよ。うっれしかったぁぁぁぁぁ!よく来たな。つーことで、また来なさい。明日でも良いし、明後日でもいい。毎日でもいい。とにかく来なよ」そう、伝えました。
家に着くと、すぐに彼は車から降りないので、早く降りろよとドアを開けました。
すると、彼は車から降りず、
「なあ、あのさ。これ、見てみ」と、彼の携帯を差し出してきました。
見ると、そこには犬が写っていました。
「おおおおおおお、かわいいいいいいいいいいいいい」と僕は言いました。
大げさに(笑)
たぶん、彼は昔、
彼に伝えたことを覚えていたんですね。
ある日、僕は彼に言いました。
「君は良い子だ。なんでか分かる?犬を飼ってんだろ?可愛がってんだろ?そんな奴で悪いやつがいるわけがない。それとね、認知症のばあちゃん。あのばあちゃんの孫してて、悪い奴になんかなれるわけがない」
そう言ったことを、たぶん、覚えてくれていたんです。
それで、車から降りると、
最後に僕にこう言ってくれました。
「また、明日、行くよ。お前、迎えに来いよ」
「いかねーよ。俺は別の送迎があんの。別の先生がお迎えに上がります(笑)僕は、そこで君を待っています」
そんな彼を僕は尊敬します。
その一歩は、彼なりの「勇気」だからです。
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